魔道具本体の中がどうなってるかのお勉強が終わったから、次はこれを魔道具にするお勉強だ。
「お水を汲み上げる魔道具って、魔道回路図だけで動かすんだね」
「ええ。この魔道具に適した魔法があるのならそれを使った魔道具にした方が魔道リキッドの使用量は減るのでしょうけど、あいにくとその様な魔法は今のところ発見されておりませんもの」
魔道具って雲のお菓子を作る魔道具や魔道ホットプレートみたいに魔石と魔道回路図で作る物と、僕んちのお尻の痛くならない馬車やお水がきれいになる水がめみたいに、魔石に魔法が刻み込んであるのの二種類があるんだ。
このうち回路図だけで作るのは簡単に作れるんだけど、魔力が回路図の中を通るもんだから燃料になる魔道リキッドをちょっと多めに使っちゃうんだよね。
それに対して魔法を刻み込んだ魔石で動かす魔道具は、魔石から直接魔力を取り込んで発動するでしょ?
だから回路図で作ったのより便利なものが作れるのに、魔道リキッドは少なくても動かせるんだ。
でもね、必要な魔法が使える人がいないと魔石に刻む事ができないから、そういう魔道具は作れる人があんまりいないんだってさ。
「この魔道具は回路図で作る事ができるおかげで、広く普及しているという側面もあるのよ」
「そっか。簡単だったらいろんな人が作れるもんね」
このお水を汲み上げる魔道具だけじゃなくって、魔道コンロや魔道冷蔵庫なんかもホントは魔法を使ったのが作れるのに、多くの職人さんが作れるようにって魔石と回路図で作る魔道具の方がいっぱい作られてるんだよっておバーリマンさんは教えてくれたんだ。
今日はただ作るんじゃなくって、お勉強のために来てるでしょ?
だからバーリマンさんは、この魔道具で使う魔道回路記号を板に書いて僕に見せてくれたんだ。
「あっこれ、初めて見る回路記号だ」
「ふふふっ、回路記号はかなり多いものね。いろいろな魔道具を作っているルディーン君でも知らない魔道具があるのは当たり前よ」
バーリマンさんが言う通り、魔道具を作る時に使い魔道回路記号はホントいっぱいあるんだよね。
だってそれだけが書いてある本が、本屋さんに売ってるくらいなんだもん。
僕もお父さんに買ってもらったから持ってるけど、それを全部覚えてるわけじゃないから、なんか新しいもんを作る時はその本を見ながら回路図を書いてるんだよね。
「それで、どれが初めて見たものなの?」
「えっとね、これとこれ」
「ああ、風の魔石専用の回路記号ね。確かにこれなら見た事が無いのも当然よね」
そう言ってうんうんって頷くバーリマンさん。
そりゃあ、僕が知らないのは当たり前だよね。
だってそれを使った事あるんだったら、お勉強しなくったってお水を汲み上げる魔道具の魔道回路図が書けるはずだもん。
「これは何のための記号なの?」
「えっと、こっちは風の魔力の流れる方向を変える記号ね。そしてこっちは、魔力を抑え込むための記号よ」
「抑え込む?」
「この表現だと少し難しかったかしら? えっとそうね、例えば魔道コンロなんかには通る魔力の量を調節して火の強さを変える抵抗の回路記号があるでしょ? あれの魔石版と言えば解りやすいかしら?」
それなら解る!
抵抗の魔道回路記号って、すっごくいろんな魔道具に使うんだよね。
例えば僕が前に作った魔道ホットプレート、あれにもこの回路記号が使ってあって、つまみを動かすと焼くとこの温度が変えられるようになってるんだ。
そっか、この魔道具って風の魔力をどっか別の所で発動させるわけじゃないから、通る時に魔力が多くなったり少なくなったりする抵抗の回路記号じゃなくって、風の魔石の魔力を直接弱くする回路記号を使うのか。
「それじゃあこの回路記号を使って、この板に魔道回路図を書いてみましょうか」
それから僕はバーリマンさんに教えてもらいながら、木の板に魔道回路図を書いてったんだ。
だっていきなり魔道リキッドの原液で書いてって、間違えちゃったら困るでしょ?
それに記号の意味や何でここにそれを書くのかを教えてもらいながらだと、時間がかかりすぎて書いてる途中で魔道リキッドが乾いちゃうかもしれないもん。
そしたらどっかで魔力が通らないとこが出てきちゃうかもしれないから、初めて使う回路記号が多い時は僕んちで魔道具作る時でもちゃんと下書きをしてから本番を作る事にしてるんだよね。
「うん。問題なくかけているみたいね」
「やったぁ! じゃあ、本番のも書いちゃっていい?」
「ええ、いいわよ」
下書きのを見たバーリマンさんが、これだったら大丈夫で言ってくれたもんだから、僕はその木の板に書いたのをお手本にして銅板の上に魔道リキッドの減益で魔道回路図を書いてったんだ。
こんな風に言うと、すっごく難しい事をやってるように聞こえるかもしれないけど、初めて書く記号は二個だけでしょ?
だから結構すいすいと書けてっちゃって、あっと言う間に出来上がったんだ。
「それじゃあ、この回路図と風の魔石、それに魔道リキッドを入れを設置していきましょうね」
「はぁ〜い」
この魔道具って、本体はプロの鍛冶職人さんが作ったやつを使うでしょ?
だから回路図とかを簡単につけられるようにって、そこんとこが取り外せるようになってたんだよね。
だから本体がおっきくっても、僕たちはそんなに苦労しなくても取り付けることができたんだ。
「それじゃあ、試運転をしてみましょう。ただ、後で井戸まで運ばないといけないから、魔道リキッドじゃなく魔力を直接注ぎ込んで動かす事になるけどね」
バーリマンさんはそう言うと、魔石がつながってるとこに手を当てながら魔力を注ぎ込んだんだよ。
そして縦長のお水を汲み上げる魔道具をちょっとだけ傾けて、僕にこう言ったんだ。
「ルディーン君。魔道具の下にあいている穴に手をかざしてもらえるかしら?」
「ここ?」
「ええ、そうよ。これからこの魔道具を起動するから、その穴からちゃんと空気を吸い込んでいるか教えてね」
「うん、解った!」
僕はね、言われた通りお水を汲み上げる魔道具の下に開いてる穴んとこにおててを当てて、
「あてたよ」
バーリマンさんに合図をしたんだ。
そしたらスイッチを入れてくれたみたいなんだけど、そしたら思った以上の力で空気が吸い込まれてったもんだからびっくり。
もしかしたらそのまま吸い込まれちゃうんじゃないかって、僕は慌てて、おててをひっこめちゃったんだよね。
そしたら今度は、それを見てたバーリマンさんがびっくりしたみたい。
「ルディーン君。大丈夫?」
慌ててスイッチを切ると僕にそう聞いてきたもんだから僕、すぐに大丈夫だよって教えてあげたんだ。
「あのね、思ってたのよりすごかったから、ちょっとびっくりしちゃっただけなんだよ」
「そうなの。良かったわ」
そう言ってほっとしたお顔をするバーリマンさん。
でもすぐに、びっくりしちゃうくらい吸い込んだのなら実験は成功だねって笑ったんだ。
井戸用の魔道具、無事に完成しました。
とは言っても実の所、これを設置す角が一番大変だったりするんですけどね。
イーノックカウの井戸は地下水ではなく川からひいてきた上水道のようなものなので下について土や砂を吸い上げるなんてことはありませんが、その代わり水が常に流れているのできちんと設置しないと水圧で管が痛んでしまったりすることがあるんですよね。
なので設置する職人さんが井戸の中に入って作業する事になります。
でもまぁ、それにルディーン君たちが立ち会う訳ではないので、その様子が本編で語られる事も、それが大変な作業であることをルディーン君が知る事も無いんですけどねw